おうちで生物多様性

都市のベランダで実りを育てて生物多様性アップ 鳥や昆虫が集まる植物選びと手軽な方法

Tags: ベランダ, 生物多様性, 植物, 実り, 鳥, 昆虫, ガーデニング

都市のベランダで始める実りの生物多様性ガーデン

都市部では、自然環境が限られているため、生き物たちのエサ場や隠れ家となる場所が不足しがちです。このような状況で、ご自宅のベランダや庭に「実り」をもたらす植物を育てることは、小さな空間から都市の生物多様性を豊かにするための有効な一歩となります。実をつける植物は、花から蜜や花粉を昆虫に提供し、実を鳥や他の生き物の食料源とするなど、様々な形で生物多様性を支える役割を担います。

このテーマに関心はあるものの、ガーデニング経験がなく、ベランダなどの限られたスペースで何から始めて良いか分からない方もいらっしゃるかもしれません。また、「虫が増えるのでは」といった懸念や、費用、失敗への不安をお持ちかもしれません。この記事では、そういった不安を和らげ、ベランダで手軽に実りのある生物多様性ガーデンを始めるための具体的な方法をご紹介します。

なぜ実をつける植物が生物多様性につながるのか

実をつける植物は、一年を通して様々な恵みを生み出します。

このように、実をつける植物は、単に私たちが収穫を楽しむだけでなく、食物連鎖の一部として多様な生き物を呼び込み、支える役割を果たしているのです。

ベランダで育てやすい実をつける植物

ベランダなどの限られたスペースでも比較的簡単に育てられ、生物多様性向上に貢献できる実をつける植物をご紹介します。

植物選びのポイント:

手軽に始めるためのステップと工夫

ベランダで実りの生物多様性ガーデンを始めるための具体的なステップをご紹介します。

  1. 必要なものを揃える:

    • 鉢やプランター: 植物の大きさに合わせて選びます。プラスチック製は軽量で安価ですが、素焼き鉢は通気性が良いです。低コストで始めるなら、中古の鉢を利用したり、リサイクル可能な容器を工夫したりするのも良いでしょう。
    • 用土: 植物の種類に合った培養土を選びます。市販の「野菜用」「果樹用」などが便利です。
    • 苗または種: 初心者の方は、ある程度育った苗から始めると失敗しにくく、比較的早く実りを楽しめます。
    • 肥料: 栽培期間が長い植物は追肥が必要になります。有機肥料は土壌の微生物を豊かにし、生物多様性にも貢献しやすいです。
    • 水やりグッズ: ジョウロなど。
  2. 植え付け:

    • 鉢の底に鉢底ネットと鉢底石を敷き、水はけを確保します。
    • 鉢の大きさの1/3から半量ほど土を入れ、苗をポットから優しく取り出して置きます。
    • 苗の周りに土を入れ、根と土をなじませます。
    • 鉢の縁から数センチ下まで土が入るようにし、水やりスペースを確保します。
    • 植え付け後はたっぷりと水を与えます。
  3. 日常の手入れ:

    • 水やり: 土の表面が乾いたらたっぷりと与えます。特に夏場は乾燥しやすいため注意が必要です。ただし、水のやりすぎは根腐れの原因になります。
    • 肥料: パッケージの指示に従って、適切な時期に与えます。
    • 日当たり: 選んだ植物が好む日当たりの場所に置きます。実をつける植物の多くは日当たりが良い場所を好みます。
  4. 低コストで始めるヒント:

    • ホームセンターや園芸店で、セールの苗を探したり、小さなポット苗から育てたりする。
    • 100円ショップのプランターや園芸グッズを活用する。
    • コーヒーかすや卵の殻などを堆肥化して土に混ぜるなど、キッチンから出る有機物を活用する(ただし、適切な処理が必要です)。

虫や失敗への懸念について

「実をつける植物を育てると虫がたくさん来るのでは」と心配されるかもしれません。確かに、花には蜜や花粉を求めてハチやアブ、チョウなどが訪れますし、葉にはアブラムシや青虫などがつくこともあります。しかし、それがまさに「生物多様性」が豊かになっている証拠なのです。

多くの虫が訪れる場所には、それらの虫を食べる益虫(テントウムシやカマキリ、クモなど)も自然と集まってきます。これらの益虫が害虫を食べてくれることで、特定の虫だけが異常に増える「害虫の大量発生」を防ぎ、自然なバランスが保たれやすくなります。

もし特定の虫が気になる場合は、まず手で取り除く、水で洗い流すといった物理的な方法を試してみてください。どうしても薬剤を使いたい場合は、植物に優しい、有機JAS規格に適合したものや、天然成分由来のものを選ぶなど、生物多様性への影響が少ないものを選ぶようにしましょう。

また、実りが少ない、あるいは全くつかないといった失敗もあるかもしれません。しかし、たとえ実がつかなくても、花が咲けば昆虫の食料源になりますし、葉や茎は他の小さな生き物の隠れ家になります。完璧な収穫を目指すことよりも、植物がそこで育ち、生き物が訪れるプロセスそのものを楽しむことに価値を見出すことも大切です。まずは一つか二つの鉢から、育てやすい種類の植物を選んで挑戦してみてはいかがでしょうか。

収穫と生き物へのおすそ分け

丹精込めて育てた植物が実をつけると、収穫の喜びがあります。自分で収穫して味わうのはもちろん素晴らしいですが、全ての若い目を摘み取ったり、全ての果実を収穫しきったりせず、一部を鳥や昆虫のために残しておくという選択も、生物多様性への貢献につながります。

完全に熟す前に鳥が来て食べてしまうこともあるかもしれません。それは「失敗」ではなく、ガーデンが生き物の役に立っている証拠です。生き物との共存を楽しみながら、実りのサイクルを見守るのも、このガーデンの醍醐味と言えるでしょう。

まとめ

都市のベランダで実をつける植物を育てることは、私たちの暮らしに彩りを与えるだけでなく、多様な生き物を呼び寄せ、都市の小さな空間から生物多様性を育む素晴らしい方法です。

ガーデニング初心者の方でも、ここでご紹介したような育てやすい植物を選び、基本的なステップを踏まえれば、手軽に始めることができます。虫や失敗への不安もあるかもしれませんが、それらも含めて自然の一部として受け入れ、植物と生き物が織りなす小さな生態系を見守ることで、新たな発見や喜びが得られるはずです。

ぜひ、あなたのベランダを、鳥や昆虫が集まる実りの豊かな場所へと変えてみてください。そこから始まる小さな変化が、都市全体の生物多様性向上の一助となることを願っています。